音楽レヴュー|小瀬村晶(Arkira Kosemura)の作品

プロフィール

作曲家、音楽プロデューサー。2007年、オーストラリアのレーベル “someone good “からピアノをフィーチャーしたエレクトロニカ・アルバム『It’s On Everything』でデビュー。
自身のレーベル「SCHOLE」を主宰。
サウンドトラック、BGMなど多数。2023年6月、英トラディショナル・クラシックの名門レーベルDECCAよりメジャーデビュー。

ソロ・アルバム

It’s On Everything (someone good, 2007)

小瀬村晶のデビュー・アルバム。アコースティック・ピアノと日常のノイズをフィーチャーしたエレクトロニカ・アルバム。とても穏やかなエレクトロニカは、何気ない日常への敬意に満ちていた。

Polaroid Piano (SCHOLE, 2009)

「ポラロイド・ピアノ」は、小瀬村晶が2009年に自身のレーベル「SCHOLE」からリリースした初のピアノ・ソロ・アルバムである。

収録曲はシンプルでミニマルなピアノ・ミニチュア。即興的な浮遊感のあるピアノ演奏。

そして、その音はピュアでとても自然だ。彼のプライベート・スタジオで録音され、DAWで音処理されたものだろう。各トラックには、アップライトピアノのペダル音、ハモリ音、キータッチ音、そして彼の自宅や屋外の環境音(鳥のさえずり、子供の遊ぶ声など)が含まれている。

詩的で、浮遊感があり、断片的で、即興的なピアノ曲は、私たちの普段の日常を表現している。タイトルは、ピアノ演奏による日常生活のスナップショットを意味しているのかもしれない。

How My Heart Sings (SCHOLE, 2011)

2011年にリリースされた『ハウ・マイ・ハート・シングス』は、小瀬村晶の3枚目のソロアルバムであり、彼のピアノ・ソロアルバムとしては2作目、本格的でオーソドックスなクラシック音楽スタイルのピアノ・ソロアルバムとしては1作目である。タイトルは1964年にリリースされたビル・エヴァンス・トリオのアルバムと同じである。

12曲入りのアルバムで、8曲がピアノ・ソロ曲。2曲はヴァイオリンとピアノのデュオ曲で、同じく2曲はサックスとピアノのデュオ曲で、実験的なサックス奏者、荒木伸が参加している。

このアルバムは、小瀬村晶を代表する、優れた、象徴的なアルバムだと思う。叙情的でありながら高度に洗練されたクラシックの楽曲を、澄んだ音色のピアノが丁寧に、繊細に、心を込めて演奏している。甘く、優雅で、純粋で、儚く、メランコリック。

小瀬村のキャリアの果実のひとつ。この上なく貴重で、純粋で、甘く、美しく、メランコリックで哀愁に満ちているが、みじめな音楽ではない。今日のポスト・クラシカル音楽の中でも特に手強い作品だ。そして、これは今日のピアノ・ソロ音楽の傑作だと思う。このアルバムをみんなに知ってもらいたい。ポスト・クラシカル・ファン、そしてピアノ音楽愛好家の皆さん、ぜひ聴いてください。

grassland+ (SCHOLE, 2010 (2014年リイシュー))

For (SCHOLE, 2015)

“For”は、小瀬村晶によるポスト・クラシカル・アンサンブルとエレクトロニカのアルバム。ほとんどの曲でピアノがフィーチャーされている。

“Gene”はエレピとシンセパッドによるエレガントで切ないエレクトロニカ。

タイトル・トラックの”For”は、シンプルでセンチメンタル、アンニュイでピュアなピアノ曲で、環境音が入っている。

“Upstairs”は実験的なパッド、エレクトリック・ピアノ、パーカッションのコラージュ・エレクトロニカ。

“Her”はミニマルで優しく、尊く透明なピアノ曲。

MOMENTARY: Memories of the Beginning (SCHOLE, 2016)

小瀬村晶の6枚目のアルバム”MOMENTARY: Memories of the Beginning”は、ピアノ・ソロ、ピアノ・トリオ、ピアノ・ソロのポップ・バラードからインストゥルメンタル・エレクトロニカ、エレクトロニカやオーガニック・ハウスにヴォーカルをフィーチャーした楽曲まで、様々なジャンルとスタイルで構成されている。

タイトル曲”Momentary”は、小瀬村を象徴するスタイルのピアノ・ソロ曲。センチメンタルでエレガントでプレシャスなムードが漂う。私は大好きだ。

“Precious”と “Imaginary”は、すでにライブEP『TRIO』に収録されている、美しく感傷的なクラシカル・ピアノ・トリオの曲だ。

“Promise with You”、”Somebody”と”A Map”はボーカルとピアノ伴奏のポップ・バラード曲。

One Day(SCHOLE, 2016)

“One Day “は、2016年にリリースされた小瀬村晶のピアノ・ソロ・アルバム。全10曲で構成されている。全曲、流れるような浮遊感のある即興ピアノ演奏が収録されており、『ポラロイド・ピアノ』(2009年)に通じるものがある。このアルバムは彼の実家で録音されたもので、幼少期に弾いていたピアノをある日、一日(One Day)でレコーディンングされている。

ペダルノイズ、キータッチノイズ、ハマーノイズ、マイクノイズ、スタジオの反射音など、温かみのあるピアノサウンド。音は純粋でシンプルで、環境ノイズやサンプル、エフェクトは入っていない。

コンポジションは曖昧で不明瞭だが、穏やかで柔軟だ。そして、無邪気さ、無心さ、ノスタルジーを感じさせる。ピアノの演奏は、繊細で優しく、リラックスしたタッチと少ない音色で構成されている。

穏やかで、繊細で、優しく、永遠だが、普遍的な、私たちの平凡な日常のためのピアノ・ソロ・ミュージックである。

In the Dark Woods (2017, Schole)

“In the Dark Woods”は、小瀬村晶が2017年にリリースしたピアノ・ソロ、ピアノ・ベースのソロ・アルバム。様々な楽器が様々なスタイルで演奏しているが、曲のテイストや雰囲気は統一されている。クラシカルでもジャズでもない、断片的で無国籍なテイストの構成とサウンド。

“DNA”はピアノのバッキング・ループを基調としたトラックで、ピアノのフレーズ、ピアノの反射、シンセサイザーのパッド・コードが乗る。この曲はDAWで編集されているかもしれない。

“Between the Trees”はアルペジオベースの美しくも無気力なピアノソロ曲。

“Sphere”はシンセサイザーのアルペジオと断片的なエレクトリック・ピアノの即興曲。

“Kaleidoscope of Happiness”、”Inside River #1 & #2″、”Innocence”はシンプルでミニマルな短いピアノ曲。

“Shadow”は感傷的で壮大かつダイナミックなピアノ・ソロ曲。小瀬村の作曲の中でも最高のもののひとつだと思う。

“Dedicated To Laura Palmer”は、浮遊感のあるシンセサイザー・パッドとエレクトリック・ピアノの断片的なタッチで構成されている。

“Spark”はシンセサイザー・パッドとエレクトロニック・パーカッションのトラックで、アンビエントのようだ。

“The Cycle Of Nature”は、ピアノのアルペジオ・ループのレイヤーを基調とした幻想的な曲で、断片的なピアノのタッチと明るいシンセサイザーのコードが続く。

“Stillness”はとても静かで、繊細でエレガントなピアノの曲。この曲は小瀬村の内省的な曲である。

“In the Dark Woods”はシリアスで重要な弦楽五重奏の曲。そして、”Letter From A Distance”は、”In the Dark Woods”のピアノ・ソロ・バージョンである。

小瀬村晶のソロアルバム。彼の様々なスタイルを楽しむことができる。そして、私はこのアルバムから作曲や作風においていくつかの音楽的インスピレーションを受けた。

Diary 2016-2019 (2019, Schole)

“Diary 2016-2019 “は、小瀬村晶によるポスト・クラシカルなピアノ・ベースのアルバムで、EPやサウンドトラックなど、2016年から2019年までの制作物をセレクトしたものだ(下に “In Moonlight “のレビューがある)。作風は様々。ピアノ・ソロ、ピアノ・トリオ、クラリネットやオーボエとのクラシック・アンサンブル、エレクトロニカ。クラシカル、オーソドックス、ポップ、そして中には日本のオリエンタルなムードもある。

“I’m (Not) Here”は、温かく穏やかだがセンチメンタルな曲。

“But You’re Mad”はアイリッシュまたはヨーロッパ風のドラムの曲。

“A Song From the Past”はエレクトリック・ピアノをフィーチャーしたジャズ・ファンク風エレクトロニカ。

“Joy”タイトルと同じ爽やかなピアノ・ソロ曲。

逆に、”You”はゆったりとしたピアノ・ソロ曲。

“Out of Solitary Mind”はシンプルでミニマルな内省的な曲。

“Late Night Tales”はシンプルでリズミカル、そして温かみのあるピアノ曲。このアルバムで最高の曲だと思う。

小瀬村の様々なスタイルと楽曲のコンピレーション。

88 Keys (Schole, 2021)

2021年にリリースされた小瀬村晶のオーソドックスでシンプル、そしてピュアなピアノ・ソロ・アルバム『88 Keys』。COVID-19のパンデミックによる非常事態の中、プライベートでレコーディングされた。そのため、曲にはプライベートでリラックスした独特のムードがあふれている。

このアルバムは、『ハウ・マイ・ハート・シングス』のようなクラシカルな作曲アプローチと、『ポラロイド・ピアノ』や『ワン・デイ』のような即興的なアプローチの中間的なテイストである。

1曲目の “Lueur “はシンプルで美しく無気力な曲だが、陽気さがあり、アルバムのオープニングにふさわしい。クラシックのバラードのようなテーマだが、曲は即興的に進行する。

曲目の “Asymptote “は、メランコリックで印象的なメロディーと構成。アルペジオをベースにした即興曲でもある。

12曲目の “Another Place “はリラックスした曲だが、少し哀愁が漂う。また、彼の明日へのわずかな意志を感じる。

優しく穏やかで、メランコリックでもあるこの曲は、自分自身を見つめ、部屋で休息するための音楽だ。そして、小瀬村の明日への、パンデミックの終焉への意志と希望を、このアルバムから感じた。

88 Keys II (Schole, 2023)

小瀬村晶が2023年に発表したピアノ・ソロ・アルバム。ピュアでシンプル、詩的でニュートラルなムードのピアノ小品17曲で構成されている。アルバム全体に穏やかで平凡な雰囲気が漂う。

“On My Way Home”は、素朴で優しく、ノスタルジックなシンプルなピアノ小品。

“Rorschach”はアルペジオをベースにした曖昧でアンニュイな即興ピアノ曲で、Hideyuki Hashimotoの音楽を連想させる。

“Untouched Rainforest pt.4″は印象的なメランコリックな曲。

“View I Remember From My Childhood”は、フォークと日本の伝統的なテイストを取り入れた優しく美しい曲。

“Hope 22″は、ライブEP”DUO”(2012年)に収録された”Hope”のピアノ・ソロ・バージョン。

小瀬村はピアノと真剣に向き合った。小瀬村はただ作曲をしピアノを弾いた。このアルバムについて多くを語ることはない。

“SEASONS”(DECCA/ユニバーサル ミュージック、2023年)

シングルとEP

Our Own Picture (Schole, 2017)

2017年にリリースされた3曲入りのピアノソロEP。

1曲目の”Romance”は小瀬村独特のセンチメンタルで儚い曲。しかし、この曲はシンプルでニュートラルで聴きやすい。

2曲目の “Out of the Solitary Mind”は音数の少ないシンプルで穏やかな曲で、内省的なリラクゼーションに適している。

曲目の “Joy”は、小瀬村を象徴するセンチメンタルで美しい曲だが、陽気で楽しく、ハイテンポでハイトーン。しかもこの曲はダイナミックな構成で、ピアノのプレイもエモーショナルなのでダンサブルだ。このEPの中で一番好きな曲。

Shuttergirl (Schole, 2018)

2曲入りのEP。”Shuttergirl “は映画「金沢シャッターガール」のメインテーマ。3拍子の爽やかなワルツのような曲。テーマパートが印象的で、クリアというかソリッドというか、美しい。とても貴重で優しいいい曲だ。「ミモザ」はピアノスタディのような40秒のとても短いピアノ曲。

Yearbook (Schole, 2018)

“Yearbook “は3曲入りのEP。

タイトル曲の「Yearbook」は、小瀬村にしては珍しく、軽快で明るく爽やかな短いピアノ曲。「Shadow」はアルペジオのバッキングを基調としたハイテンポでメカニックかつセンチメンタルな曲。「アムール」はオーソドックスでシンプル、美しくもセンチメンタルな温かい曲。

In Moonlight (Schole, 2019)

“In Moonlight “は2曲入り。小瀬村らしくシンプルでミニマルで明快な構成と、ソリッドなピアノの音色とプレイがわかりやすく明快で、とてもいい作品だ。

“Trace “はアルペジオ・フレーズの繰り返しを基調としたミニマルで無気力な曲で、小瀬村のアイコニックなテイストもある。

Romance (Schole / 1631 Recordings, 2019)

“Romance “は3曲からなるピアノソロEP。左手のアルペジオを基調とした上品で美しい、普遍的だがシンプルなピアノ曲で聴きやすい。

リソースとリンク

Akira Kosemura – Music Composer Official Site

Schole – Akira Kosemura

UNIVERSAL MUSIC JAPAN – 小瀬村晶

Wikipedia (JP) – Akira Kosemura

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