あらすじ『神の子どもたちはみな踊る』村上春樹(新潮社、2000)

本の情報

2000年に出版された村上春樹の短編集。阪神大震災と思われる地震が、すべての物語に登場、あるいは関連している。そして、地震は人の心を変えるもの、あるいは、そこから人の心の傷やトラウマが浮かび上がらせるものである。

UFOが釧路に降りる

ハンサムなオーディオ機器の営業マン小村は、地震をきっかけに特別な理由もなく妻と離婚した。同僚の佐々木から、妹のために遺灰が入ったような箱を運ぶように頼まれる。

小村が空港に着くと、佐々木の妹とシマオさんという若い女性二人が小村を呼び、カフェへ入り、小村は箱を手渡した。

3人が到着したのは、佐々木の妹とシマオさんの知人が経営するラブホテルだった。佐々木の姉は用事があって帰宅し、小村とシマオは、島尾の熊の面白いエピソードを語り、そして愛し合うのだった、、、(…)

アイロンのある風景

茨城のとある町、午前0時の数分前、コンビニエンスストアの店員・純子は関西出身の画家・三宅から呼び出された。そこで純子は、恋人のサーファーでアマチュアギタリストの啓介と一緒に焚き火をしに行った。

三宅はある海岸で流木を集め、前衛的な彫刻のような焚き火を丁寧に作っていた。そして、新聞紙を束ね、その隙間から滑り込ませて、ライターで火をつけた。

順子と啓介は、1ヵ月前に起きた神戸の地震のことを三宅に尋ねた。三宅は、妻と二人の息子が神戸の東灘区にいると言った。しかし、三宅はその話を止めた。

そして、三宅と純子は、焚き火の話や、ジャック・ロンドンの死の話をした。そして、三宅は「アイロンのある風景」という油絵を描いたと言った、、、(…)

神の子どもたちはみな踊る

25歳の男、大崎善也は、宗教上の理由による母親の意向で家を出られず、家を出て一人で暮らす事ができない。彼の「案内人」である田端は、父親は向こう側の存在であると言った。母親は医師とコンドームを用いて愛し合ったらが、しかし、3回妊娠し、3は神聖な数であるので、善也を産んだ。そこで母親は、善也は神の意志で生まれたと言った。

ある日、善也は霞ヶ崎駅で自分の父親と思われる男を見つけた。善也が追いかけると、千葉に入る手前の駅で降り、男はタクシーに乗ったので、善也はタクシーで追いかけた。

男は降りて野球場に入ったが、姿を消した。善也はピッチャーマウンドに登り、自然に体が動き出して踊りだし、何時間も踊り続けながら、学生時代の彼女とディスコで踊ったことや、田端さんの事や言い残したことなどを思い出した、、、(…)

タイランド

甲状腺の学会に参加するため、甲状腺専門医のさつきが飛行機でタイへ行った。

さつきは学会の終了後、1週間ほどタイに滞在し、休養を取った。そして、ガイド兼運転手のニミットの案内で、山奥の高級リゾートに滞在した。

最終日、ニミットに誘われて訪れた貧しい村で、80歳近い老婆に運勢を占ってもらった。そして、老婆は、さつきの体の中に石があり、さつきは大きな蛇の夢を見ると言った、、、(…)

かえるくん、東京を救う

信用金庫の営業マンである片桐が帰宅すると、アパートの部屋に2mほどの大きなカエル、かえるくんがいた。かえるくんは、地震を止めて東京を救うために、一緒にみみずくんを倒してほしいと言った。かえるくんは、片桐の勇気と正義の力を必要としていた。かえるくんは片桐の同意の見返りに、片桐の仕事の案件をひとつ解決した。

彼らの計画では、地震が起こる予定の前日の夜、片桐の会社の地下のボイラー室に片桐が行き、それからみみずくんを倒しに行くことになっていた。しかし、その日の夕方、片桐は男に拳銃で撃たれてしまう、、、。

次の日、片桐は意識を取り戻し、病院のベッドで目を覚ました、、、(…)

蜂蜜パイ

短編小説専門の小説家の淳平と妻の小夜子は、娘の沙羅が地震のニュースをテレビで見てはいけないと話していた。

兵庫県西宮市夙川出身の純平は、早稲田大学の文学部に入学した。そして、両親には「商学部に進学した」と嘘をついた。淳平と小夜子、そしてその友人の高槻は、同じ学科の同級生だった。小夜子は高槻と付き合ったが、3人は奇妙な三角関係を維持した。淳平は短編小説家になり、小夜子は大学院に進学し、高槻は大きな新聞社の新聞記者になった。大学院に進学して半年後、小夜子と高槻は結婚した。そして、小夜子は女の子を出産した。その女の子は、淳平によって沙羅と名付けられた。

沙羅が2歳の時、小夜子と高槻は離婚した。沙羅は小夜子に養育権があり、4人は家族のような不思議な関係として時々会っていた。そして、淳平と小夜子はいつしか結婚した。淳平がルポルタージュの取材でマドリッドを訪れた時、地震が発生した。淳平の実家は西宮、淳平の両親や兄弟はそこに住んでいた、、、(…)

商品詳細

神の子どもたちはみな踊る
村上春樹
新潮文庫、東京、2002年2月28日
240ページ、572円
ISBN 978-4101001500

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