『「超」勉強法』野口悠紀雄(講談社)

『「超」勉強法』野口悠紀雄(講談社、1995年12月)
英語は「丸暗記法」で!!
1995年にベストセラーになった経済学者・野口悠紀雄の勉強ノウハウ本。
自身の経験や知識から導き出した勉強法の基本原則や英語・国語・数学の勉強法、暗記法、勉強のための集中法やタイム・マネジメントについて述べられています。
野口氏が薦める英語の勉強は一言で「丸暗記法」(全体法)と言い切れます。
「丸暗記法」は、同じテキストを繰り返し読むことで単語の意味や語法・文法を含めてコンテクストで関連づけながら総合的に英語を習得していく方法です。わからないヴォキャブラリーを調べて、ただ何度も英語のテキストを読むだけの勉強法です。
筆者は、冠詞や前置詞の問題にも対応できて、英作文も覚えている文章をベースにして単語を入れ替えればいいとしています。
ただし、丸暗記法は効果はありますが、時間はかかります。でも、毎日、15分とかでも続ければ、効果があるそうです。
その一方で氏は、単語帳の作成や詳細な文法の分析などの学校英語・受験英語的な「分解法」による英語勉強を否定します。英語と日本語の単語は1対1で対応せず語のもつニュアンスやコノテーションを読み取れず、冠詞と前置詞の使い方や英語的な表現方法も身につかない、としています。
また、発音の基礎に拘泥するのではなく、つねに英語を使って「英語細胞」を身につけることを提案します。
これらの勉強法は当然、他の外国語にも応用できて、野口氏は難易度の低いフランス語やドイツ語での大学受験を薦めています。
リーディングやリスニングを沢山して、コンテクストの中で外国語を習得するという方針は、僕の勉強法の方針と同じなんです。ですが、母語ではない外国語をネイティヴと同じようには習得することは難しいと思います。発音や文法の法則を知識としてある程度理解して分解して外国語を分析することから始めないとノンネイティヴが全く言語の構造が異なる外国語を習得することはできないと思います。ただし、日本語の発想や思考法を捨てて外国語をそのまま理解するという方針には賛成です。僕は、「丸暗記法」と「分解法」の併用が必要だと思います。

『英語は「やさしく、たくさん」』伊藤サム(講談社)

『英語は「やさしく、たくさん」』伊藤サム(講談社パワー・イングリッシュ、2003年12月)
ノンネイティブの筆者の経験に基づいた多読多聴の英語勉強法!!
ノンネイティブ(父親は日系アメリカ人)で週間ST編集長の筆者の経験や知識に基づいた多読多聴の英語勉強法やその勉強法を支持する理由やバックグラウンド、英語習得のためのプリンシプルが紹介されています。
本書のコンテンツは以下のようになっています。
第1章 「やさしく、たくさん」の英語勉強法のメリットと定義について
第2章 やさしい音声教材をリピートでずっと聞き流す英語習得法と教材を紹介します
第3章 日本語とまったく構造が異なる英語を学習能力が「化石化」した大人が理解するための、「やさくし、たくさん」の勉強法のメリットについて
第4章 基礎的な英語、音声教材やペーパーバックを短期的に徹底的に勉強する効果を自身の体験に基づいて説明
第5章 英語を英語のリズムや単語の意味そのもの、文中のコンテクストから理解することを提言
第6章 子供に対するイマージョン(没入)学習の効果と概念で英語を理解することの重要性
第7章 モチベーションを維持して本当の意味で効率的に英語を習得するための動機や目標の大切さと、中学レヴェルの基礎の重要性と専門用語を覚えることの効果
第8章 英語の基礎の基礎である発音の重要性とそのための教材と勉強法の紹介
第9章 英語のイメージを全体的に習得するために思い切ってPenguin Readersなどのやさしいリーディング教材を多読することを提案
第10章 英会話上達のために基礎表現を意味のかたまりで覚えること、転換練習などで英語で思考することの重要性
第11章 英語をシンプルに書くことと冠詞の重要性、そして英文を書くコツ
英語勉強法の「やさくし、たくさん」の定義とは、「超やさしい英語をたくさん聞いたり読んだりし、だんだんレベルを上げていく。」ことです。それによって、英語について日本語で理解する「英文和訳(訳読)方式」ではなく、英語を英語のまま受け入れることで英語を自然にネイティヴと同じ感覚で身につけることを目指します。
具体的な勉強方法が紹介されず、出版社の事情からか教材もあまり紹介されていませんが、英語の本当の意味での効果的・実践的な学習方法のためのバックグラウンドになる知識やプリンシプルについて十分に書かれています。セサミストリートやイラストつきの文法書など「思い切ってやさしい」英語を読み聴きすることとその重要性が力説されていることが新しいと思います。
英語習得の根幹である発音の重要性や学習方法についてはあまり書かれていませんが、多読多聴が重要であることは、僕の方針と同じです。
英語の勉強をやり直される方、英語の習得で伸び悩んでいる方は本書のご一読をオススメします。
Cheers!!